過去の会長挨拶


太田寛行(茨城大学農学部)

本年6月から、日本土壌微生物学会の会長を引き受けることになりました、茨城大学の太田寛行です。本学会は、1954年に発足した「土壌微生物談話会」を原点とし、60年以上の歴史をもっている伝統ある学会です。これまでの本学会の発展に貢献されてきた諸先生方と、学会員の皆様に深く感謝申し上げるとともに、宍戸雅宏副会長共々、本学会がさらに発展するように努力していく所存です。
いきなりですが、多くの学会で学会の在り方が問われています。本学会の場合、2006年の正会員数は約600でしたが、年々減少しこの10年で約450にまで下がりました。この減少は何故でしょうか? 今が、その分析を行い皆さんと学会の将来を論じるチャンスだと思っております。そこで、早速、この挨拶文から議論をスタートさせたく思いました。そのスタートとして、一般的な話になりますが、先日、参加した研修(「大学の戦略的ガバナンスとアカデミアの成長」、上山隆大教授)のなかで出てきた言葉を紹介します。それは、「知識の連鎖性と想起性:埋め込まれた知識をどのようにretrieveするか」です。この意味をまだ十分には読み解いていませんが、学会の在り方に関係するように感じています。論文等で示される知識(形式知)は、ネット社会が発展する中でだれもが自宅でアクセス可能な状況になってきました。一方、論文等には表現されない、そして論文著者も意識していない「埋め込まれた知識」は研究者間の直接的な対話や議論によって、初めて回収できるものです。議論のメンバーが多様であればあるほど、回収される知識は様々なものになるでしょう。学会とは、本来、このような場であったと思います。特に、本学会は植物病理系と土壌肥料系が融合した学会である点で、「埋め込まれた知識」の回収が当初から仕組まれていたと考えることができます。思い起こせば、この議論は、相野前会長が掲げた「土壌微生物を通して、自由に論議し、その中から新しい発想が生まれ、展開していく」学会につながります。
本学会をさらに盛り上げるように努力していきたいと思っておりますので、引き続き皆様のご支援をよろしくお願いいたします。

平成29年6月 太田寛行

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相野公孝(兵庫県立農林水産技術総合センター)

日本土壌微生物学会の活動に際しましては、日頃から多大なるご理解とご協力を賜り厚くお礼申し上げます。今年度から本学会の会長に就任しました兵庫県立農林水産技術総合センターの相野公孝です。横山正副会長共々よろしくお願いいたします。
1954年(昭和29年)に本学会の前身である「土壌微生物談話会」が発足しました。 1960年には「土壌微生物研究会」として改名され、さらに、1998年に日本土壌微生物学会の設立となりました。学会としては比較的新しいのですが、活動は60年あまりの歴史があります。
本学会は、他の学会に比べ比較的自由な雰囲気が味わえる学会だと思います。自由であるがために厳しい批判も受けることはありますが、いろいろな研究分野の方々が、土壌微生物を通して、自由に論議し、その中から新しい発想が生まれ、展開をして行きます。このような雰囲気が若手研究者にとって「ゆりかご」の様な役目を果たし、また、学会構成員にとっては異分野研究の架け橋を担っていると思います。
これまでの伝統を守りながら、今まで以上に自由な発想が受け入れられる学会となるよう、また、より一層土壌微生物研究が発展するように微力ではありますが全力を尽くしたいと考えております。今後とも引き続きご支援をお願いいたします。

平成27年6月 相野公孝

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齋藤雅典(東北大学農学部)

去る3月11日に発生した東日本大震災で被災された方々にお見舞いを申し上げますとともに、 亡くなられた方々のご冥福をお祈り申し上げます。被災された地域の一日も早い復興をお祈り申し上げます。
今年度から日本土壌微生物学会の会長に就任しました東北大学の齋藤雅典です。副会長の相野公孝共々どうか宜しくお願いいたします。 平成23年6月に開催する予定だった土壌微生物学会大会は、東北大震災の影響で延期をしておりましたが、この度、成23年11月25~26日に宮城県大崎市鳴子温泉で開催することとなりました。多くの方々に東北地域へ来ていただくことが、震災からの復興の一助となるものと思います。ふるってご参加頂きますよう宜しくお願いいたします。
なお、例年ならば大会に合わせて総会を開催して会務報告および会務案の御検討を頂いていたところですが、今年は6月に総会を開催することができないことから、やむを得ず資料を皆さまに郵送し御検討頂きました。この間に頂いたご意見ご質問の内容を盛り込み、後日会誌「土と微生物」および学会ホームページに確定版を発表いたします。本来ならば直接、会員の皆様のご意見を伺うべきところですが、諸般の事情をご斟酌頂き、ご理解・ご協力のほど宜しくお願いいたします。
さて、日本土壌微生物学会は、土壌微生物学と植物病理学を専門とする研究者が、それぞれ研究の対象とする土壌の微生物に関する試験・研究の深化と農業技術への寄与を共通目的として設立された学会です。1954年に学会の前身である土壌微生物談話会が発足してから、数年後には60年を迎えようとしています。この伝統ある学会の会長をお引受けすることは、その重責に身の引き締まる思いですが、これまでの経験を踏まえて微力ながら全力を尽くしたいと思っています。引き続き各位のご支援を心よりお願いする次第です。

平成23年10月 齋藤雅典

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土屋健一(九州大学農学部)

日本土壌微生物学会は、土壌微生物学と植物病理学を専門とする研究者が、それぞれ研究の対象とする土壌の微生物に関する試験・研究の深化と農業技術への寄与を共通目的として設立された学会で、数年後には設立60周年を迎えます。その基本理念と精神は、これまでも脈々と継承され、最新の研究情報、技術情報を享受しつつ、学会活動を通じて多くの研究成果の発信に努めながら、より学際的な学会を目指して成長を続けています。
この伝統ある学会において会長をお引受けすることは、その重責に身の引き締まる思いですが、これまでの経験を踏まえて微力ながら全力を尽くしたいと思っています。550余名から成る正会員、賛助会員をはじめ、歴代会長、評議員各位からのご提言、および学会事務局委員による提案と実行が、学会運営をスムーズに、そして活発な活動へと機能させる大きな原動力となっており、引き続き各位のご支援を心よりお願いする次第です。
学会の看板である会誌「土と微生物」は、編集委員会を中心に新企画の導入を図りつつ、更新に努めており、日本微生物生態学会との共同編集誌「Microbes and Environments」とともに更なる充実化を進めていきたいと考えています。そのためには、会員各位の研究成果を両誌に投稿いただくことが不可欠です。質の高い論文はもとより各種実験法の紹介や解説記事の掲載など、皆様のご参画とご協力を糧として、本学会の姿をもっと広くアピールできるよう努力していきたいと考えております。
冒頭に示したように当初2分野で発足した本学会も、現在では、会員の所属や専門分野、そして学会における発表内容についても、多様化がみられ、歓迎すべきことと思っています。土壌、植物、および微生物に関する基礎研究の深化を目指すとともに、農業現場での生産と環境を取り巻く諸問題の解決に資する応用研究として、各々が関係する他分野との境界領域との間で積極的に連携を図ることにより、多様化する異分野との連鎖的な融合が形成され、本学会の裾野を拡大することができるものと期待しています。
土壌微生物学研究は、「食の安全・安心」、「環境保全・調和型」農業の推進と密接に関わる中で、医食同源の見地から、環境微生物と病原微生物との接点を例にしても、農学、獣医・畜産学、公衆衛生学等の研究領域を共有しているものと思います。われわれがその境界領域を探究することは、研究の流れとして自然であり、また社会的ニーズにも応えるものと考えます。今後一層、学会活動における異分野との融合を促進してゆきたいものです。
私達は、会員同士での研究成果の発表や情報交換にとどまらず、学会活動や関連の国内外情報を広く社会に公開することに努めています。学会ホームページによる紹介はもとより、学会時に開催する市民公開シンポジウムは恒例となりました。土壌微生物研究を通じて、環境保全型農業や食の安全・安心などについて、一般市民にわかりやすく説明し、啓蒙を図ることで、より一層、学会が果たす社会的貢献の役割を果たして行きたいと考えています。また、小学生を対象として微生物の不思議や面白さを体験させる出前授業において、将来、研究者を志して孵化する可能性を秘めた卵達に対して興味を喚起することは、われわれの使命を超えた喜びと期待を感じることです。これらの行事についても関係者のご協力を得ながら、益々、発展させたいと願っています。
将来展望に加え、学会編「新編土壌微生物実験法」の改訂など、課題を一つずつ解決しながら、さらに日本農学会や日本学術会議における土壌微生物学研究の存在を高めるべく、よりオープンで活気ある土壌微生物学会の維持、発展に努めたいと思います。
皆様のご支援とともにご要望や御意見をお寄せ下さるようお願い致します。

平成21年6月 土屋健一

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